Manusの共同創設者 タオ・チャン氏
東京イベント講演

AIエージェントの未来を語る

🤖 Manusとは何か

Manusという名前はラテン語で「手(hand)」を意味します。タオ・チャン氏によれば、過去2年間のLLM(大規模言語モデル)は「考える」ことはできるものの「行動する」ことができない状態でした。Manusは「AIに手を与える」というコンセプトから生まれました。

タオ・チャン氏は自身の経験を語ります。彼は9歳(1996年)からコーディングを始めましたが、当時の中国では各家庭にコンピュータがある状況ではなく、小学校のコンピュータルームで週に2回だけプログラミングを練習する機会がありました。それ以外の日は紙とペンでコードを書き、実際のコンピュータでテストする機会が限られていました。

「複雑な問題を解決するには『手』が必要です。実世界からのフィードバックを得て初めて、本当の問題解決ができるのです。」

AIの思考と行動の関係性

従来のLLM

思考
↓
テキスト出力
↓
ユーザーが行動

Manus

思考
↓
自律的行動
↓
実世界からのフィードバック
↓
思考の改善

📊 Manusの性能と優位性

Manusは性能面でも他のAIモデルを大きく上回っています。GAIAベンチマークでは、OpenAI's Deep Researchを10%以上上回る性能を示しました。特にレベル1とレベルRでは顕著な性能差が見られます。

コスト効率性においても、Manusは圧倒的な優位性を持っています。同じ問題解決において、OpenAI's Deep Researchより10倍コスト効率が良く、以前のSOTAモデルと比較しても5倍のコスト効率を実現しています。

「私たちは最高のパフォーマンスと最高のコスト効率を両立させました。これは業界において非常に稀有な成果です。」

性能比較(GAIAベンチマーク)

レベル1
85%
Manus
75%
OpenAI Deep Research
レベルR
78%
Manus
68%
OpenAI Deep Research

コスト効率性比較

Manus
1x
以前のSOTAモデル
5x
OpenAI Deep Research
10x
※同一問題解決コスト(相対値)

🌐 汎用エージェントとしてのManus

Manusは「世界初の汎用エージェント」を標榜しています。タオ・チャン氏のチームはYS W25ベンチマークの21の垂直型エージェントプロジェクトを分析し、Manusがそれらのユースケースの76%をカバーできることを発見しました。

さらに重要なのは、Manusが多くの場合、専門特化した垂直型エージェントよりも優れたパフォーマンスを発揮することです。これは汎用性と高性能を両立させた画期的な成果と言えるでしょう。

「私の個人的な見解ですが、Manusはこれらの垂直型エージェントの70%以上において、より優れたパフォーマンスを発揮できると考えています。」

垂直型エージェントのユースケースカバー率

Manusでカバー: 76%
カバーできない: 24%
※YS W25ベンチマークの21の垂直型エージェントプロジェクト分析結果

⏱️ 重要KPI: AHPUのユーザーあたりの代理時間

Manusの最も重要な成功指標は「AHPU(Agent Hours Per User)」、つまりユーザーあたりのAIエージェントが代理で行動する時間です。この指標はManusの真の価値を示すものであり、従来のチャットボットパラダイムの限界を超えるものです。

タオ・チャン氏は、多くのユーザーが質問する動機や能力を持たないことを指摘しています。プロンプトエンジニアリングのテクニックがあっても、適切な質問をすることは多くのユーザーにとって難しい課題です。

「ユーザーの能力に制限されるAI製品はスケールしにくいのです。ユーザーが質問の仕方を知っていれば製品の価値を見出せますが、そうでなければ価値を見出せません。」

Manusはこの問題を解決し、ユーザーが質問しなくても価値を提供できる新しいパラダイムを確立しました。ユーザーはAIに目標を設定するだけで、AIが自律的に行動し、ユーザーは他のタスクに集中できるようになります。

AIとユーザーの関係性の進化

従来のAIチャットボット

ユーザーが質問
↓
AIが回答
↓
ユーザーが行動

Manus

ユーザーが目標設定
↓
AIが自律的に行動
↓
ユーザーは他のタスクに集中

AHPU(Agent Hours Per User)

= ユーザーあたりのAIエージェントが代理で行動する時間

🧠 Manusの開発背景

Manusは同社の最初の製品ではありません。タオ・チャン氏の会社は最初に「Morecards」というブラウザ拡張機能を開発しました。この製品は現在2000万月間アクティブユーザーを持ち、年間1800万ドルの収益を生み出しています。年末までには3000万ドルの収益を目標としています。

Morecardsはブラウザ内でLLMの力を活用するための拡張機能で、長い記事の簡略化、メールの下書き、YouTubeの要約など、数百の機能を提供しています。しかし、ブラウザ拡張機能には制限があることも明らかでした。

「Chromeブラウザの拡張機能には3つの制限があります。すべての人がChromeを使っているわけではない、すべての人がブラウザで作業するわけではない、そして拡張機能とは何かを理解していない人も多いのです。」

Morecardsの成長

2000万
月間アクティブユーザー
1800万$
現在の年間収益
3000万$
年末目標収益

🌐 AIブラウザプロジェクト

次の戦略的展開として、タオ・チャン氏のチームは2023年3月からAIブラウザプロジェクトを開始しました。当時14人のスタートアップで12人のエンジニアを投入する大規模プロジェクトでした。

6ヶ月間の開発期間で、ローカルで動作する小型モデル(Llama、CTT、Cromerプロジェクト)を組み込み、ブラウザタブの自動整理、非構造化データのExcelへのエクスポートなど、革新的な機能を実現しました。

しかし、リリース直前の2023年9月、タオ・チャン氏のチームはこのプロジェクトを中止する決断をします。

「AIがブラウザを制御する際、ユーザーはキーボードとマウスから手を離す必要があります。また、AIの処理が完了するまでの待機時間が不確実で、結果として『手を離してスクリーンを見つめる』という不自然な体験になってしまいました。」

AIブラウザの主要機能

  • ローカルで動作する小型モデル
  • ブラウザタブの自動整理
  • 非構造化データのExcelへのエクスポート
  • 画像・動画のアップスケール
  • リンクのプレビュー

AIブラウザの課題

  • ユーザーはキーボードとマウスから手を離す必要がある
  • AIの処理完了時間の不確実性
  • 「手を離してスクリーンを見つめる」という不自然な体験

🔮 まとめと結論

タオ・チャン氏の講演は、AIエージェントの未来に関する深い洞察を提供しています。Manusは「AIに手を与える」というコンセプトから生まれ、従来のLLMの限界を超える汎用エージェントとして開発されました。

GAIAベンチマークでの優れた性能、コスト効率の高さ、そして垂直型エージェントのユースケースの76%をカバーする汎用性は、Manusの強みを示しています。

しかし、最も重要なのは「AHPUのユーザーあたりの代理時間」という新しいKPIです。これはユーザーが質問する能力に依存せず、AIが自律的に行動することで価値を提供する新しいパラダイムを示しています。

「Manusは単なるチャットボットではありません。ユーザーの代わりに行動し、時間を節約し、複雑な問題を解決するエージェントです。これがAIの次の進化の形です。」

Manusの強み

🚀

最高のパフォーマンス

GAIAベンチマークで競合を10%以上上回る

💰

コスト効率

競合より5〜10倍のコスト効率

🌐

汎用性

垂直型エージェントの76%のユースケースをカバー

⏱️

AHPU

ユーザーあたりの代理時間を最大化